もう10年ほど前。
12〜13曲を一気に作っていた時期がある。
曲の途中で変拍子を挟んだり、その変拍子に “できるだけキャッチーなメロディを乗せて、いかに変拍子を感じさせなくできるか” ということに、やけにこだわっていた。チカラの入れどころは、完全に「歌詞よりも曲」だった。
それはそれで、自分なりに満足のいく結果になった。だがその反動なのか、次は逆のことを試したくなった。
曲はできるだけシンプルにする。
その代わり、歌詞に物語の展開を持たせる。
そうして仕上がったのが『クルミ』だったと記憶している。
作ってみると、前に作っていた楽曲群とはあまりにも質感が違う。並べると浮いてしまう。ならばこれは、別の形でまとめようと思った。だったら、この続きを書いてみても面白いのではないか。そうして次に生まれたのが『捕食者の約束』だった。
細部の記憶は曖昧だが、流れとしてはそんな感じだったはずだ。
そこで自分が「これは……!!」と感じたのは、歌詞の一行目から、すでに物語の続きを描けるということだった。
一曲の中には長さの制約がある。物語を進めようとすれば、歌詞は増え、メロディは痩せる。極端に言えば、全面ラップでなければ成立しなくなる。良し悪しは別として、曲という形式には限界がある。
だが、物語を曲と曲で繋げていけば、その制約から少し自由になれる。
天啓を受けたわけではない。壮大な構想があったわけでもない。技術的な試行錯誤の延長で、偶然、物語が逃げ道を見つけただけだ。
けれど、その瞬間から、創作の勢いは明らかに変わった。
曲の中に閉じ込めていたものが、外へと流れ出した。