発熱

入院初日から身体の調子が悪く、発熱した。
熱を測るたびに、37度、38度と上がっていく。

「このままだと手術が延期になるかもしれません」と伝えられる。

翌々日の手術準備のため、すでに下剤を飲み始めていたが、追加でレントゲンなどの検査も受けることになった。違う種類のプレッシャーもあり、かなり緊張した(検査中にもよおさなくて、本当に良かった)。

インフルエンザやコロナの検査も受けたが、どちらも陰性。原因がわからないまま夜を迎えると、熱は39度以上まで上がり、かなりきつい夜を過ごした。

途中、点滴で解熱剤を打ってくれたことは本当に助かったが、根本的なところは解決していない。

翌日も熱は下がらず、担当医から「今回は中止にしましょう」と伝えられ、一時退院の運びとなった。また来週病院を訪れ、改めて手術スケジュールを調整するとのことだ。

個人的にも、仕事の予定の組み直しや、いくつもの連絡を思い浮かべて、かなり困惑した。だが仕方がない。発熱時の手術は、合併症のリスクが高くなるらしい。身体は大切である。

しかし、どこかホッとしている自分もいた。それが一時的な退院であったとしても「一度ここで立ち止まりたかったのかもしれない」とも思えた。

実際、帰宅するとすぐに身体は楽になり、熱も順調に落ちていった。

手術を避けたいわけでも、逃げたいわけでもない。ただ、少しだけ、もう少しだけ、時間が欲しかったのだろう。その夜はうまく眠れなかったが、プレッシャーはなく、気持ちは穏やかに過ごすことができた。

ふと「やっぱりギターを手に入れよう」と思う。

実は入院日の少し前、楽器屋へ行き、気になっていたモデルについて店員に尋ねていた。入荷したら連絡をくれる、という約束になっていた。

連絡はまだ先だと思っていたが、思いがけず入院初日に知らせが届く。

当然、退院してからでないと見に行けないため、入院中であることを伝えて返信すると「そういった事情でしたら……」と、試奏のために取り置いてくれるとのことだった。

そのギターを買うと決めていたわけではない。ただ、写真を見て気になり、実物があれば見てみたいと思っただけの流れだった。

それが思いがけず早まったことで、ギターの方から自分に近寄ってきているような——あるいは呼んでくれているような——そんな気もして、自分の中で何かのスイッチが入った。

明日、そのギターを試奏しに行く予定である。買うかどうかは、実物を見て、触れて、弾いてみて決めることだから、まだわからない。

今はとてもフラットな気持ちで、買うか/買わないかは、もう大した問題ではなくなっている。だから、ギターとの出会いが、ただの妄想であっても、そうでなくても、それはどちらでもいい。

一番欲しかったのは、こういった “余白” だったのかもしれない。