実物をひと目見た瞬間——
そのボディに触れた瞬間——
最初の一音を奏でた瞬間——
とか、そういうことではなかった。
ひと目見て、ボディに触れて、そしてしばらく試奏しても、ギターの購入に迷いは迷いとしてあった。でも案外そういうものかもしれない。楽器屋さんに取り置いてもらったアコースティックギターを購入した。
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少し、昔を思い出す。
17歳の頃、手に入れた『ホワイト・ファルコン』というギターがあった。
今は無き、津田沼パルコの島村楽器の “クリスマス半額セール” とやらで、新品が半額で展示されていた。
相当長い時間試奏させてもらっていた覚えがある。しかも1日だけではなく。
販売価格は20万はしなかったと思うが、十代の自分には大金も大金だ。あの時ほど懸命にバイトに励んだことは無かった。
店員さんにギターを取り置いてもらい「◯月◯日に購入予定」で、その時までに必ずお金を作って持っていかなければならない。
こうやって振り返ってみると、それは自分なりの青春の一ページだったのだろう。
無理かもしれないと諦める理由を考えると、山程出てくるが「もう既に手に入ることが決まっている」と認識すれば、頑張るとか頑張らないとかじゃなくて、ただ日々が淡々と過ぎていった。
イトーヨーカドーのスーパーで品出しの仕事をしていたと思う。大した作業ではなかったが、とにかく社員が嫌なヤツだったのを覚えている。ギターを手に入れた翌月には辞めていた。
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今回、購入したギターとは流れやタイミングが良かった。店員さんも、何度か同じことを口にしていた。
でもきっと、楽器との巡り合わせとは、そういうことなのだろう。その店員さんはきっと、何人もの “そんなドラマ” に触れてきたのだろうとも思えた。
買うか/買わないか、を見ていたのではないように思う。その人にとってのタイミングに対して、誠実に向き合ってくれたように感じる。
きっと、あの時の店員さんも同じだったのかもしれない。