「緊張していますか?」
手術室の前で、看護師に声を掛けられる。
そうだったのかもしれない。
そう見えなかったのか、それとも、そう見えたのか。
あとはもう、委ねるしかなかった。
麻酔が効き始めれば、何もできることはない。
眠っている間、世界は存在するのだろうか。
昔、そんな歌詞を書いたことを思い出した。
——
時間も場所も、わからなかった。
どこかからどこかへ運ばれていた。
身体は動かない。
体には、いくつもの管が通っている。
呼吸器。
心電図。
両腕の点滴。
尿道。
肛門。
「……手術はしたんですか?」
「はい、手術を行いましたよ」
「……今、人工肛門ですか?」
「いえ、違いますよ」
働かない頭でも、この二つの問いでわかったことは一つだった。
最善だった、ということ。
安堵したい気持ちはあった。
だが、身体の不自由さがそれを上回る。
眠りたい。
けれど、痛みと不快感がそれを許さない。
今は何時なのかもわからない。
寝返りすら、満足に打てない。
それでも。
何も起こらなかったことに、感謝が込み上げてきた。